今日は快晴です。残念ながら、真っ青な空とは関係なく、オフィスで報告書及び申請書作成と格闘しています。
最近、新聞記事の切り抜きを日課にしています。主に、医療関係、教育関係、イノベーション関係に分けてファイリングするようにしています。昨日整理していると、興味ある記事を見つけました。東大前理事の江川雅子さんが、理事6年間を振り返って、「東大、組織改革の課題」を記載していました。
「最も驚いたのは、04年の法人化で国立大学は形の上では独立した組織になったにもかかわらず、財政、人材などの資源面で自由度が低く、依然として自律的な経営をしにくい仕組みだったとことである。---。近年、改革のため学長に権限を集中させるべきだという声をよく聞く。だが、大学は一定の資格を得た構成員によって統治される組織であり、企業のようなヒエラルキー型組織とは異なる。ハーバード大学経営学者から、『大学の学長はアメもムチもなしで経営をしなくてはならない』と教えられた。---。つまり学長は人事権を持たず、組織文化と構成員への説得で大学を経営しなければならないのである。---。必要なのは、大学を中央集権型の組織に変えることではない。分権的な組織を維持しながら全体として管理できるようにするための透明性の向上、全学に関わる意思決定・資源配分を迅速に行うプロセスの整備である。」
私が長い間不満に思っていたことが、意を得たように簡潔明瞭に記載されています。まったくその通りです。
「他にも、驚いたことがあった。1つは、構成員の多様性が低いことである。外国人の学生・研究者が少ないばかりでなく、日本人でも男性、東大出身者の比率が高い。---。2つ目は、競争的資金の導入によって組織が寸断され、自律的な活動や人材育成が困難になっていることである。法人化後に競争的資金による研究教育活動が増えたが、競争的資金によるプロジェクトは期限があるので教職員も継続的に雇用できない。---。長期計画に基づいて行うべき教育が、打ち上げ花火のような5年限りの『プロジェクト』として遂行される一方、本来に自律的、継続的な改善のための資源が枯渇し人材への投資も行われない。---。法人化以降、東京大学の教職員の意識が大きく変わり、改革が進んだことは疑いがない。だが、今後もグローバル競争の中で存在感のある大学として生き残るには、さらなる改革が必要である。
具体的には、1.自律した組織として運営できる体制の整備、2.分権的構造を維持しつつ全学として意思決定や資源配分を迅速に行える体制や透明性の高い経営管理の仕組みの導入、3.経営にあたる専門的人材の育成、4.人事の透明性、人材の流動性・多様性を高め、世界中から優秀な人材を集める、などが重要であろう。
時間がかかるかもしれないが、どうしても必要な改革である。」
日本を代表する東大でもこのような状況です。このままでは、本当に日本の大学は崩壊してしまいかねないと危惧しています。医療においては、医療安全に対する過度な社会的要求や医療費抑制政策などを背景とした医療崩壊が叫ばれて久しいですが、その上に大学の崩壊を来すようでは、医学教育、医学研究が立ち行かなくなります。
私は、これまで、自律した組織として運営できる体制整備を進め、NPO法人消化器健康医療研究機構(GI-Care)、ベンチャー企業株式会社消化器健康医療サポート(GI-サポート)、一般社団法人神戸国際消化器内視鏡教育センター(I GET KOBE)、一般社団法人医療イノベーション神戸連携システム(MIKCS)、神戸消化器クラスター研究会を設立し、連携体制を組んできました。今後も、これらの連携による自律運営体制のもと、消化器内科の、臨床・教育・研究を推進していきたいと思います。
その上にも、さっさと研究助成の報告書と申請書を作成しないと---。